前回“超”精密切削加工のキーワードで仕事が殺到したことを書きましたが、その百件の依頼内容を詳細に分析すると、実際に「超精密」に該当する難加工仕様は少なく大半は「通常の精密加工」の範囲であった、ということが判明。さらに設計者が精度アップしておけば安全だという、過剰設計というものもありました。つまり依頼者が“超”精密加工出来る能力の工場だから安心して発注出来るという心理だったというわけです。ここには検索キーワードをどのようにユーザーに提示すべきかという根本問題が潜んでいます。 私は2年前、某鉄道車両メーカーから、路面電車の身障者用リフトの作成依頼の打診を受け、一品生産ものに大手企業が極めて弱いと観測し、神奈川県内の中小企業団体4団体による「少量高精度難加工」ものに対応するチームを編成しました。ものづくりネットワークプロジェクト60社です。丁度その頃、県内の某商工会議所が1万7千社のデータベースを構築したという宣伝を受け、試みに「一品生産」で検索したところ1社も出なかったというショッキングな「事件」が発生しました。翻って我々の「ものづくりネットワークプロジェクト」でも改めてリーフレットを見たところ、「一品生産」の用語が一社も記入されていなかったことを発見しました。これではいくら「一品生産」に対応するという宣伝文句を使っていても、各企業の事業説明の中に入っていなければ何もなりません。
つまりいくらIT技術と言っても、会社の検索対象となる基本用語の中に、ユーザーが必要とする内容・用語が開示されていなければ宝の持ち腐れというわけです。 |