全国に公立図書館が約三千、うち県内には八一(二〇〇五年、〇二年は六一)。近年は高齢者の利用が増加しているが、逆に少子化の中で子供が本を読まなくなったという声も聞く。
団塊の世代の退職者の増加が叫ばれている中、在職当時利用出来た企業の図書室や資料室が利用出来なくなり、大学や県産業技術センターを利用する人が増えている。こうした中で公立図書館を新たに新規創業支援や資格取得のために利用させようという試みが進んでいる。
我が国では長らく公立図書館が一般の生涯教育の場として利用されてきたが、国家的な新産業育成や環境・福祉等の課題が重要視される中、ビジネス支援にも利用可能ではないかという声が専門家や関係者の中から挙がってきた。これには米国の公立図書館の動きも影響を与えた。確かに、高齢者や女性・若者などは既存の中小企業支援機関を尋ねるより手近な公立図書館を利用する方が馴染みやすい。
二〇〇〇年十二月に「ビジネス支援図書館推進協議会」が設立され、全国で百六〇館ほどが加盟、県内では県立川崎図書館や相模原市図書館などが参加している。ちなみに川崎図書館は社史や特許情報などを揃え、産業図書館として予てから知られてきたが、昨年十月からさらに充実させた。
中小企業者や新規開業しようとする人達を対象に従来の特許相談だけでなく、月2回の相談員の配置(㈳神奈川県経営診断協会の協力)、中小企業支援機関からの参考図書の推薦、資格取得図書コーナーの設置、セミナーの開催など。「推薦図書」は貸し出し希望が多い。
社史は過去の商品開発の実態を調べるのに役立つ。新聞情報検索システム「日経テレコン」も無料だ。他県では相談員にNPO法人が協力している。
こうしたサービスを行うには図書館司書の専門能力の向上が課題で、ビジネスプラン作成、地域性を活かしたビジネスアイデアの発掘、市場開拓の資料収集等商工行政顔負けの知識や手法を身につけさせる県もある。利用者による交流サロンも有効だ。
全国3千の公立図書館がこれらに類するサービスを手掛けるならば、現行の中小企業支援機関の配置数をはるかに上回る地域サービス網が出来上がる。 |