神奈川・東京・千葉の中小企業55社が、航空・宇宙部品づくりへ参入した。市場規模は合わせて1兆4千億円、宇宙産業だけでは4千億円弱である。市場は自動車産業などに比較すると非常に少ない。しかも宇宙部品産業から撤退する企業が少なくないのは、発注量が少なく、技術的にも困難性があり、無重力・高真空・超耐熱・耐宇宙線などの性質を要求され、業界特有の品質保証態勢が難しいからだ。
現在、部品ベースで国産化比率が30%を割る寸前という。しかし、海外輸入部品は事故が起こっても生産履歴が判明しない場合が多い。「重要保安部品だけは国産化を維持したい」という旧NASDA=宇宙開発事業団、現在は独立行政法人・宇宙航空研究開発機構(JAXA)=の「宇宙用部品技術委員会報告」から、量産部品が海外へ流れる中で極少量生産システムで新たな技術開発に挑戦する中小製造業の生き方を考えた。
将来の市場規模は航空・宇宙時代を迎え当然膨らむ。むしろ課題は、従来、大手システムメーカーが代行していた品質保証を中小企業が自前で確立出来るかどうかにある。2003年9月、県異業種グループ連絡会議の呼び掛けで「航空・宇宙開発関連部品調達支援プロジェクト(まんてんプロジェクト)」を設置、04年4月共同出資の株式会社JASPA(ジャパン・エアロスペース・パーツ・アソシェイション)を設立した。
この会社の最大の使命は中小企業集団として、日本で初めて自前の品質保証態勢を築くことである。04年12月に高度な三次元測定器をドイツの企業から購入、傘下企業の技術評価や支援態勢に着手した。幸いJAXAには04年3月に「地上試験用推進装置」、同7月には「試験用バネ」を納品した。05年2月には「2次元展開システム」の成約にこぎ着けた。わが国の中小企業としては初めて取引口座をJAXAに開設した。先の委員会報告では「神奈川中小企業グループを今後育成していく」とある。宇宙予算は防衛問題だけでなく、科学的探究や商用利用など国民的意識と表裏一体である。東大阪の人工衛星打ち上げ集団を良きライバルとして、地域に高度な宇宙部品づくり基盤を構築することに努めたい。 |