民間の「リストラ」による従業員数の減少は近年著しいが、神奈川県庁の職員数もこの15年間で15%以上削減されている。組織数もかつては四百以上あったが、現在は三百である。これは県庁の中心部の動向であるが、いわゆる神奈川県が経費負担している人件費相当職員数は2003年度七六、二一九人に上る。うち市町村立学校職員数は46.2%の三五、二四九人、「県職員数」は53.8%の四〇、九七〇人である。しかし「県職員」のうち警察職員と県立学校の教職員で、ほぼ三分の二を占める。「役人」という概念に当たる知事部局が約一一、二百人、企業庁、教育庁、その他の任命権者(議会事務局、選管、監査、人事委、漁業調整委)を合わせて約二、二百人である。この十五年間で警察職員は6.25%、九一九人の純増であるが、それ以外は軒並み15%以上減員されている。問題は、ゆがみがないか、ということである。県庁では現場機関の統合・廃止などの削減が目につく。いわゆる人事・財政・企画などの「中枢部分」の縮小は相対的に少ない。しかし「企画部門」は各事業部局が「多能工」的能力を身に付ければ「調整的仕事」は不必要である。二年から三年周期の機械的人事異動により、専門職の役割は相対的に低下し、全員が偉大なる「素人集団」になりつつあり、民間の知識に追いつかない。全員が副知事になれるわけではないので、ゼネラリストとしての教育は不要である。むしろ、県職員はもっと地域や分野、部門や施策、事業・テーマなどのスペシャリストとして位置づけられるべきである。自らの蓄積した知識や現場体験、豊富な実態調査に基づくサービスの質で県民の期待に応えるべきである。汚職と経験年数は相関関係が少ない。公務員の倫理感を高めることにより防止可能だ。慣れない仕事に回されることによる精神的苦痛による潜在的病人は3%近いと推定される。短期間の人事異動制度を止めれば、人事部門も縮小可能である。リストラの最後に企画部門は不要だったという民間企業の経験から、不要不急の企画事業の廃止も可能である。全体に地域と県民に奉仕するという「原点」に立ち返って、「権威」ではなく「真のサービス」と「大胆な強者と弱者の調整」を行うことによる存在感が必要であろう。
(04.07.14神奈川新聞 芝忠) |